キリスト伝  

第6章 反対された年


116−118  イエスに対する感情の変化
119ー131  反対の原因
          有力者たちの反対
    119  サドカイ人
  120−130 パリサイ人の彼への反対理由
      122 彼らの偏見
      124 .イエスの卑しい生まれ
      125 イエスの弟子たち
      126 イエスの言い伝えの統無視
      127 安息日
      128−129 .悪魔と結託し神を汚しているという非難
      130 彼らの反対の進展
      131 ヘロデ
  132−135 一般民衆の離反
      132 彼に対する一般の人々の見解
      133 五千人の給食の影響
      134 彼らの王となることへのイエスの拒絶
  136−143 彼の伝道の様相の変化
       136−138 弟子たちがふるいにかけられた
       137 へんぴな土地をさまよう、弟子たちの大いなる告白
       138 イエスの苦難の予言、弟子たちの盲目さ
   139−142 この時期におけるイエス自身の考えと気持ち
       140 祈りに満たされる
       141 .変貌
       142 ガリラヤからの出発とエルサレムへの旅
       143 議会の彼への死刑判決
  
  116.
イエスは一年間、ガリラヤで絶え間なく精力を注いで働きを続け、彼の奇跡の助けを求める哀
れな群衆の間を巡り歩き、機会を捉えては群衆や真剣に求めてくる一人の人にも恵みと真理
の言葉を注いだ。
家庭の一員に健康と喜びを回復してやった家庭は何百もあって、彼の名は通り文句となった。
幾千の心に彼の説教は興奮を与え、彼は喜びと愛を抱かれた。
彼の名声はますます広く行き渡った。
一時、全ガリラヤが彼の弟子になったように見えた。そしてその運動は容易に南にも展開で
き、すべての反対を抑え、国全体を癒し主への愛の熱狂に包み込み、教師に服従しそうに見
えた。
  
117.
しかし12ヶ月経つやいなや、そのようなことは起きないという悲しむべき証拠がでてきた。
ガリラヤ人のこころは石地に変わり、神の国の種が速やか芽を出したところで、同じように速
やかに枯れた。
その変化は急激かつ完全であった。そしていっぺんにイエスの生活の姿を変化させた。
彼はガリラヤに6ヶ月に渡って身を避けた。しかしその月々は最初の12ヶ月とは非常に異なっ
た。
彼の周りでおきる声はもはや歓迎と喝采の叫びではなく、反対と皮肉と冒涜であった。
ある名の知れた場所から国内の密かな場所に移動しても、どこに行っても彼の奇跡を経験し
あるいは見たいと期待する人々に歓迎され、数千の熱心な人々が彼の説教を一言も聞き逃す
まいと思ってついてくる姿はもはや見られなかった。
彼はほんの僅かの弟子達を連れてもっとも離れたへんぴな場所を探す逃亡者であった。
その六ヶ月の終わりに彼はガリラヤを永久に去った。しか、一時は期待されていた、民衆の感
謝の波に乗り、国の南部の人々のこころに容易に征服して、民の一致した声に抵抗できない
エルサレムを、勝利を持って攻め取るためではなかった。
事実、彼はユダヤとペレアの南部で六ヶ月間働いた。そこではじめは彼の奇跡が見られ、ガリ
ラヤの場合と同様最初の月には歓迎の民衆の熱狂の印がみられた。しかし大部分は彼の親
密な弟子たちの仲間にいくらかの影響を与えたのであった。
事実彼はガリラヤを去った日から彼の顔をしっかりとエルサレムに向けていた。そしてペレアと
ユダヤで六ヶ月過ごしたが、それはその地でのゆっくりとした旅で占められていた。しかし、そ
の旅は十分な確証の始まりであった。そこで彼は弟子たちに次のことを明確に説明した。首都
において彼は、熱心な心と、悟った精神に歓呼を受けるのでなく、最終的な国民の拒絶をうけ
王冠に代えて殺されるのであることを。
  
118.
私たちはガリラヤ人の感情の変化の理由と進み具合、そしてこの悲しいユダヤ人の経歴の変
化の跡を追わなければならない。
  
119.
一番はじめから、学者たちや有力者階級の人々は彼に反対する態度をとり続けた。
事実、彼らの中の最も世的な党派・・サドカイ人たちとヘロデ党の人々・・は、長いこと彼に何の
注意も払わなかった。
彼らは彼らの富と、宮廷における影響力、そして自分たちの娯楽にのみ関心を払った。
彼らは下層の人々の間に進行する宗教運動をほとんど気にしなかった。
誰かが救い主が現れたと言ったという世の噂は、彼らの興味を刺激しなかった。なぜならその
事柄に対する民衆の期待を、共にすることはなかったからであった。
彼らはお互いにその時々におきてくる民衆の考えにそって、救世主のふりをしているだけだと
いいあった。
彼らが関心を示したのは、それらの運動が政治的な暴動に発展し、国の主人であるローマ人
の鉄槌をもたらし、総督に搾取の口実を与え、彼らの平穏と快適さを危険にさらす恐れのある
ときのみであった。それ故、彼らはイエスに何の関心も払わなかったのであった。
 

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